この歳になると一年があっという間に過ぎていくが、そんな中でも2020年はいつになく長く感じた一年だった。

今年の年明けが随分前のことのように感じてしまう。

 

そんなことがあっても良いか、そうも思う。

企画展開催にあたっては、私にとってはロコさんと会うことが重要だった。

お互いに思考を止めたくない、そんな気持ちは同じだったと思う。

「今年しましょう!」

そう言ってもらって、迷いなく今年最後の企画展にすることを決めた。

そのことは、今でもとても感謝している。

展覧会が始まってから毎日ギャラリーに踏み入ると、木彫の木の香りが空間中に広がっている。

初日は明らかにいつもと違う澄んだ空気にちょっと驚いてしまった。

楠の木をよく使うというロコさんの作品からは、どこかスパイシーな香りも漂っていて

否応でも自然を意識せずにはいられない木彫の世界を体感することができる。

今回は「地底湖」というテーマでレリーフの新作を用意してくださった。

ギャラリーの奥の空間は、ロコさんの手によって生み出された地底に漂う生き物たちが点在している。

その作品の魅力はどこにあるのか。

もちろんこの実在感にはダイレクトに訴えかけられるのだが、

会期中に目を通したロコさんの資料の中の対談記事にもヒントが隠されているように思えた。

その一端は、ロコさん自身の経験と実感に基づいているところが大きい。

自分が生まれ育った土地や移住先の自然環境の中で感じたことを、そのまま作品にも反映させている。

私たちが住んでいるのは決して人間だけの世界ではなく、もっと大きな世界。

ロコさん曰く、昆虫、鳥、爬虫類、ほ乳類の王国のような世界。

その感覚は、触れてきた自然環境に得ているのだと分かるし、

作品そのものにも見て取れると思う。

芸術は言葉も宗教も超えたところにある。

心の中で共感する力があり、心の手を繋いで広がることができる。

どんなにお金があって、どんなに便利な生活を送っても、文化芸術は人間の心には不可欠と感じています。

アートというフィルターを通して沢山の人の生活に潤いが生まれますように。 白水ロコ

 

ロコさんの作品は、2021年1月6日まで延長して展示を継続いたします。

ロコさんの作品と共にPuntoは年越し。

12月26日以降は予めご連絡のうえご来廊ください。

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