ART PROGRAM

アート・プログラムとはGaleria Puntoを母体とした実行委員会で、美術館や画廊と言った特定の空間で接することの多かった美術作品を公共の空間へ展示することにより、環境の向上、芸術・文化の振興及び地域の活性化に貢献することを目的とし、2006年に岡山市立市民病院でスタートしました。アート・プログラムは、広く様々な空間でアートの可能性を探る試みを続けています。

次回のアート・プログラムの開催は、2019年9月28日(土)~10月13日(日) 兵庫県加古川市 刀田山鶴林寺にて開催。

私たちのアート・プログラムは、医の空間で、心身の弱った方々にアートによってエネルギーと力を与え、楽しませ、元気づけることを目指してきました。

古来、病める人が求め、また提供されてきた芸術の内容は時代とともに変遷してきました。その中には長い年月を経ることで医空間のアートとしての存在を確立し、多くの人の心の支えになった作品も数多く現存します。そのような作品に出合うと、作家の思いと人々の思いが作品を通じて共鳴した様子を想像することができます。一方で、一人一人の好みや価値観の多様性から、病める人が求め、また、癒されるアートにも固有性があると考えられます。

近年の科学技術の展開は、一人一人の個性を生物工学、情報工学の手法で探求する道を提供してきましたが、ディープ・ラーニングの出現によって、近い将来、自分の個性との“対面”も可能になるかもしれないと感じられるようにすらなってきました。 “テイラー・メイドのアート”といえば聊か陳腐な響きかもしれませんが、医空間において提供されるアートにも自分の個性を反映されたものが登場するでしょう。今回のアート・プログラムでは、AIをコンセプトに、大阪大学大学院医学系研究科 佐藤宏道教授、内藤智之講師のご参加を得て、個人の感性を移植したAIによる視覚芸術が展示されます。同時に難病の筋ジストロフィ患者が「生と死」を見つめて描いた作品も展示し、人間とAIの関係にも思いを馳せていただきます。ゲーテは色彩論の中で“自分の本性に適合したものが外部からもたらされたり、自己決定の可能性がある方向に著しく確定されたりする場合に、快い感覚を享受するのである”と書いています。皆さんもゲーテに代わって時代の先端のアートを感じてください。

アート・プログラム顧問 川崎医療福祉大学 特任教授 後藤真己

また、アート・プログラム実行委員会ではボランティアスタッフを募集しています。アートに興味のある方は、事務局Galeria Puntoまでお気軽にご連絡ください。

「施美時間」のはじまり

私たちのアート・プログラムは、2006年岡山の病院で始まりました。その際、関係者には以下のようにお話してきました。「時々耳にする“病院”にアートを持ち込むという言い方を私は好みません。それだと、“病院”には本来アートは無いとの前提のようです。“病院”という言葉は英語の“hospital”に対する訳語として中国で誕生し、我が国では明治維新直前に長州藩の医師兼軍略家村田蔵六(大村益次郎)が初めて用いたそうですが、“hospital”の語源はラテン語のhostis(見知らぬ人)で、それはhospitalis(見知らぬ人をもてなす)から英語の“hospitality”へと続きます。そして、“hospital”は、長い歴史の中で、それを育んだ時代時代のもてなしの文化、アートと密接な関係をもってきました。残念ながら、日本では戦後効率的に設計・建設された“病院”に、本来、内在するべきアートが希薄であったかもしれません。」

しかし、我が国には“病院”よりもはるかに古い時代から、医を行う場がありました。聖徳太子が建てられた四箇院が思い出されます。医の空間には、豊かな仏教美術も存在しました。聖徳太子に縁の深い、そして薬師如来を本尊とする播磨の名刹、刀田山鶴林寺で「アート・プログラム in 鶴林寺」を開催するにあたって、何度か同寺に参りましたところ、病苦など多くの苦しみ、悩みを抱えた人々が素晴らしい仏教美術の施しをうけたであろう長い歴史が想像されました。

「アート・プログラム in 鶴林寺」で鶴林寺の長い時間の流れに現代アートを加えることで、美の施しがさらに豊かになるのではないかと期待しています。そのような願いを込めて、テーマを「施美時間(せみじかん)」といたしました。

現代作家の作品は、同時代を生きる作家の意図と鑑賞する人々の思いが、社会の情勢の影響を受けながら呼応して力を発揮します。
未曾有の震災を経験し、祈りと希望を希求する今、長い歴史の芸術を擁して人々を育んできた鶴林寺において現代アートの作家によるアート・プログラムを開催できることは、また、未曾有の好機と感じる次第です。
皆様のご支援に感謝申し上げ、多くの方々に施美時間を過ごしていただきますことを念じております。

【「施美時間」の開催履歴】