2006年に岡山の病院で始まったアート・プログラムは、

2011年より兵庫県鶴林寺にてビエンナーレとして開催を続けている。

4回目となる2017年には資金不足のため中止という経緯を経て

4年越しの今秋、4回目となるアート・プログラム 施美時間の開催にこぎつけた。

今展は小規模ながら、現代アートに加えAIによる芸術表現、

そして筋ジストロフィー患者さんのアート作品をAIによって解析した結果なども合わせて展示する。

AIを用いて研究に取り組んでいるのは、大阪大学大学院医学系研究科の佐藤教授、内藤講師の研究室である。

そして、筋ジス患者さんの作品提供に全面的に協力いただくのは徳島病院だ。

我々アート・プログラムは、佐藤教授らと共に徳島病院を訪問した。

出迎えてくださったのは、徳島病院の柏木医師である。

まずは、筋ジストロフィー症という疾患のことから教わる。

筋ジストロフィーは、身体の筋肉が壊れやすく再生されにくいという症状をもつ、たくさんの疾患の総称。

柏木先生のお話によると、7歳になると遠く離れた県外から筋ジスの患者さんはやってくるという。

中には「学校に行くよ」と言われて来る子どももいる。

小さい椅子に座っていた幼い子どもは時間がたつとお兄ちゃんたちが使っていた車椅子に、

お兄ちゃんはさらに成長すると自分よりも年上のお兄さんが使っていた車椅子に乗り換える。

一番大きい車椅子に座っていたお兄さんはどこへ行ったのか?

・・・・・

そうやって、若い患者たちは皆 死というものを認識していくのだと聞いた。

先生が受け持ったたくさんの筋ジス患者さんの多くは、成人式を迎えられなかったそうである。


そして、現在は使われていない場所を含め、二日かけて病棟内を案内していただいた。

私は、比較的多くの病院を経験している方だと思っている。

自分自身を含め、家族の移植・手術・介護などでの入院はざっと数えただけでも30回はゆうに超える。

比較的気が楽な病棟からピリピリムードの完全無菌室まで、思い出すのも辛かったこともある。

今回訪問した、四国神経 筋センターと名づく国立病院機構 徳島病院は、

これまで私が経験した様々な病院とは少し趣が違っていた。

患者さんが過ごしていた病室。

筋ジス患者さん特有の体を動かすための器具などが、

体育館のようにも思えるとても広い空間に設置されている。

あらゆる場所が広いのは、車椅子や動くための椅子とストレッチャーが合わさったような?

ものに乗り換えて動くことを考えれば、当然なのだろう。

お風呂やトイレには、ドアも仕切りもない。

そこにはプライベートなんて存在しない。

車椅子に座れる患者さん、起きられない患者さんによってお風呂の形態も異なる。

私が感じた少しの違いは、おそらく彼ら患者にとっての病院は治療のためでも入院する場所でもなく

最後まで住む家だったのではないだろうかと。

ただ、そこには私たちが当たり前に過ごす家族も自由もなかったに違いない。

人生は不公平である。

今の自分が自らの選択と言うのならば、原因があり結果があると言うのならば、

2歳で発症した彼らは一体何が理由だと言うのだろうか。

長い廊下にはズラッと患者さんたちの作品が展示されている。

それもそのはず、趣の違いにはもうひとつある。

病棟のあちらこちらに、制作のためのスペースや道具が揃えられているのだ。


ふとした所に専門的な道具や石膏像まで置かれているのだから、

病院の意識の高さは凄い~~。

私も愛用している軟膏などを入れる容器に顔料が分けられている。

そして病棟内に展示してある以外にも、実にたくさんの作品が保管されていた。

とても全部は見切れないほど。

この日は、実際に飾ってある作品の作者にも会うことができた。

一緒に歌を歌っているところにも出会う。


この日、私たちは悩んだ結果、数十点の作品を選び車に運び込んだ。

選んだ作品は9月28日から開催される「アート・プログラムin鶴林寺vol.4~施美時間~」にて展示する。

病院で保管されている作品は多岐に渡り、アート作品やCDジャケット、読み切れないほどの詩も残されている。

中には谷川俊太郎かと思う程の文章や、見事な色彩で描かれた表現に目を奪われる。

彼らの表現は、もっとフォーカスされるべき作品で、

それは個人個人の生きざまと切っても切れないものだと思う。

「みんな死にました」

そう言って、患者さんの名前を言いながら家族のように懐かしむ柏木医師の姿が、全てを物語っているようだった。

筋ジスの患者さんを支えてきた徳島病院は、今なお闘い続けている。

私たちアート・プログラムは、鶴林寺を皮切りにこれらの価値ある作品を発信していくつもりである。

それは、表現はもちろんのこと、今回の徳島病院訪問で得たものが私たちの心に刺さったように

作品=生きざまを通して救われる誰かの命もあるのではないかと信じている。

鶴林寺では、大阪大学大学院医学系研究科の佐藤宏道教授のブースで、これら筋ジス患者さんの作品を展示。

佐藤教授のAIによる作品分析と合わせてご覧いただけると、より理解が深まるはずである。

近年の医学の進歩はめざましく、新薬の開発や研究も進められている。

また、筋ジストロフィーにも様々な種類があり、

ここに記した内容はその実状の一部であるということを間違ってはならない。

今回の展示にあたり、アート・プログラムへのご支援をお願いすべくクラウドファンディングに挑戦中。

筋ジス患者さんとそのご家族、支える医師や研究者への応援となることを切に願っています。

こちらからご支援よろしくお願いいたします。

 

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